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人の暮らしは全く感じられない空間だったけど、誰もいないとは違う感覚があり、声をかけた。
「こんばんは、どなたかいらっしゃいますか?」
今の花穂の声が聞える人は少ないはずだけど、どこでは反応が返ってきた。
「どうしたのかね? こんな所に一人で」
花穂が言うには綺麗なお姉さん。
スッと現れたらしい。
「はじめまして、宮野花穂といいます」
「丁寧な挨拶ありがとう、我はこの塚の守人 通と呼ばれておる、それでいかなるご用件かな?」
「私、行くべき場所を探しているのですが、なかなか見つからなくて」
「そうか、未だにそなたのような者を引付ける流れが残っておったのか」
「ここはどういう所なんですか?」
「昇り塚と呼ばれておってな、かつては迷える者たちが旅立つ場所であったが、今はその役目を果たせておらぬ」
「そうですか……」
「残された者たちがおる、まだ、冷静な判断がつくなら他を探した方がよいぞ」
「私のような人が他にもいるんですか?」
「動けるそなたはまだ探すという道があるだけよい、この奥には皆で押せばその門を開けると思い、留まるうちに動けなくなった者たちが多くおる」
「もっと多くの人がいれば開けられるかも知れないんですか?」
「いや、望みは薄い、元より魂が未熟な上、現世に未練を残した者たちが互いの痛みを分かち受け入れた後、天地の流れを借り旅立つための場所、今はその天地の流れが滞っておる故、いくら未熟な魂たちが集まろうと旅立てぬ苦しみが膨らむのみ、やがては天地を犯す悪霊と化すやも知れぬ」
「そんな、なんとか助ける方法はないんですか?」
「そなたも未熟な魂、これ以上できぬ未練を重ねれば悪霊と化そう、余計な事は考えずに自らの道を探しなさい」
「そう言われても、聞いてしまって見捨てるなんて」
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