鏡よ鏡よ鏡さん

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鏡よ鏡よ鏡さん

鏡よ、鏡よ、鏡さん。 世界で一番美しいのはだあれ? それは、もちろん私よね? そうよ、花音(かのん)はこの世で一番かわいい娘よ。 いつも、ママはそう言って私の髪の毛をとかしてくれたわ。 それは今だって、変わらない。 私の部屋の窓から、秋の気配を感じた。 これは銀木犀の匂いかしら。いいえ、もしかしたら金木犀なのかもしれない。 私に、それを庭に出て確かめる術は無い。 何故なら、私は、このベッドから起き上がることの出来ない体になってしまったからだ。 「おはよう、花音。今日はすごくいい天気だから、ちょっと寒いかもしれないけど、空気を入れ替えるわね。」 そう言いながら、ママが窓を開け放ったからだろう。空が高い。いつの間にか、遠くの銀杏が黄色く色付いている。 あの不幸な事故から、私はずっとこの窓に切り取られた世界しか見ることができなくなっていた。 あれからどれくらい時間が経ったのかしら。  数週間?数ヶ月? ずっと床に付していると、時間の感覚が無くなってしまう。     
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