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「それでよく、頭を軽くこづかれたんですよね」
夢子は頬を赤らめながら、マスターに打ち明けた。
「いい思い出じゃないですか。それじゃあ、ますます、かつての恋人を忘れるカクテルは飲みにくくなりますね」
夢子は言葉に詰まってしまい、視線を落として、指先を見つめた。
「でも、私は忘れて前に進みたいんです。だけど、どうしてもそのカクテルを飲む覚悟ができなくて……」
マスターはにっこり笑う。
「焦ることはないですよ。それでは今日は何を?」
「ソルティードッグをください」
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