仲良くしよう!

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椿は、店での会話を思い出していた。 あの時の「会ってもいい」という秋夜の言葉の意味は、店で会うということではない。 (店内で言われたらプライベートでなんて気づくわけがない!だ、騙された…?) 騙されたように感じてしまっている椿は、秋夜を見て、頭を悩ませた。 理由は、秋夜の目がすごくキラキラしていたからだ。 彼のあの瞳を見ると、騙しているとは思えず、問うて見ようとも思ったが、騙すという言葉を彼に投げるのはなんだかすごく勇気がいるような気がした。 だから、 「ねぇ、秋夜くん。君は、なんで僕と会いたいって言ったの?」 それを確かめるために、椿は秋夜に質問を投げかけた。 秋夜は、暫くの間黙っていたが、やがて口を開き、こう言った。 「んと、白王子に興味をもって、もっと知りたいなって思ったから、かな」 「え…」 予想とはかなり違っていた理由に、唖然とした。 「なんていうか、白王子って不思議なオーラを纏ってる気がするんだ。ミステリアスイケメン?っていう感じ。だから、普段はどんな顔をしたりするのかなって気になった。一緒に遊んだりね」 「なんだ、そういうことか」 安堵する椿。 「いいよ。秋夜くん」「やった!」 秋夜は、その答えに心底嬉しそうに笑った。 だが、顔を伏せて考えるような仕草をする。 「俺、白王子の名前知らないよな?」 「そうだった。僕は椿。改めてよろしくね」 「椿。いい名前」 その言葉に、違和感を抱く。 「!ありがとう、嬉しいよ」 (初めて言われたはずなのに、前にも言われたような感じがする…。なんでだ?) 椿の顔が、自然と曇っていく。なぜ、どうして。その言葉が頭を巡っている。 「だいじょーぶ?なんだか顔が曇ってるよ」 「っ!」 秋夜が、心配そうに顔を覗かせる。 その声に、椿は何処かに行ってしまいそうな思考を、慌てて現実に戻した。 「ちょっとした考え事をしていたんだ。心配いらないさ」 なるべく平然を装いながら答える。 「本当?ならいいけどさ。これ、俺の連絡先。夕方からは暇だからいつでも連絡してね」 「りょーかい」 その時、ちょうど電車が来たことを合図する音楽が流れた。 「あ、もう電車くる!椿、またね!」 「あ、うん!また」 だんだん小さく見える彼の背中を見つめながら、椿はフゥ、とため息を一つこぼした (あの違和感、何?何か変。思い出せそうで思い出せない) 自分の拳を見つめ、もう一度ため息をこぼした。
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