本編

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クリスマスイブだというのに今日は朝から晩までバイトが入っている。 パチンコ屋には盆も正月も、ましてやクリスマスなんてもんは無い。 少し早目の休憩を同僚と一緒に取る。 晩御飯の時間にはかなり早いが、カップ麺にお湯を注いで、出来上がりを待っていると、休憩室兼事務所スペースに店長が入ってくる。 「お前ら、ちょっと外でとけー。」 軽く言われるがもうカップ麺は出来上がる寸前だ。 ふとドアの方をみると、紺のベストにヘルメットという重装備のおっさんが二人…。 現金輸送車用の警備員さんだ。 「集金の時間かわったんすか?」 今まで、もっと早い時間だったはずだ。 「質問しないで、とっとと退室する。」 店長に同僚ともども追い出される。 セキュリティの都合上現金を金庫から取り出すとき俺らのようなアルバイトは室内に居られない。それに、集金時間などの詳細に関しては質問厳禁、口外厳禁だ。 仕方がないので、バックヤードの廊下でラーメンをすする。 うん、わびしい。クリスマスなので余計わびしい。 「そういえば、鈴木さん、今日お泊りデートらしいっすよ。」 同僚が話しかけてくる。 鈴木というのは、少し年上のバイト仲間で、本日は休暇の人間だ。 カップ麺を食べながら「ふーん。」と気のない返事をすると 「何ですか、その余裕、もしかして、岡田もこの後デートだったりする!?」 焦ったように言った後、リア充爆発しろだの、クリスマス陰謀説だのを呪詛のように吐き続けた同僚はとりあえず無視する。 当然というか何というか、この後デートに行くような予定は無い。というか、恋人というカテゴライズに当てはまる人間は一応居るが、男同士ということもあってか、クリスマスムードは全くといって無かった。 まあ、男同士で、ロマンティックとかドラマティックとか気取ろうとしても土台無理がある。 そもそも、今日はあいつもバイトのはずだ。 俺が黙っていると、同僚はお前かっこいいんだから、すぐ彼女くらいできるってと慰められた。
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