第二章

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運命の出会いって、本当にあるんだなと思った。 ねぇ、君もそう思うでしょ? 僕の可愛い奥さん。 僕と美夜子の出会いは職場だった。入社説明会の時に隣に座っていた彼女に僕は一瞬で恋に落ちた。その時声をかければ良かったのに、そんな勇気もなくファーストコンタクトは手応えなしに終わる。そして僕は営業部に、美夜子は事務部に配属になり、部署は違えど社内で度々見かけることもあったが、なかなか話しかけることが出来ずにいた。 「岳、あの子に声かけたの?」 賑わう社員食堂で、向かい側に座ってかき揚げうどんをすする同僚の望月が僕にそう聞いた。 「ぜんぜん、きっかけも何もないしね」 「部署違うと話す機会ないもんな~、...そもそも既に彼氏とかいるんじゃないの?綺麗な顔してるし」 「やめろよ、考えないようにしてるのに」 僕が気にしてるのを知っててわざと嫌なところをついてくる望月。そもそも声すらかけられてない状況なのに、そんなこと考え出したらキリがない。入社して早3ヵ月。新人歓迎会というビックチャンスの場ですら、彼女とのコンタクトは何もなし。 「なにか、奇跡とか起こらないかな...」 「フーン...。割と本気なんだね、あの子のこと」 「......一目惚れってやつ、?」 まァ、頑張れ!って雑な言葉を残して空になった丼ぶりを僕のトレーに乗せる望月が席を立つ。自分で片付けろよ...と思いつつ、まだ皿の上に残っている生姜焼きに箸を伸ばした。
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