第二章

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いつまでも機会が訪れるのを待っている訳にもいかず、自分から行動しなきゃとアレコレ考えてみるも、なかなかいい案が思いつかない。こうしてあっという間に月日が流れていくのかと思うと自分が情けなくて仕方がない。 外回りを終えてオフィスのエレベーターに乗り込む。既に定時を過ぎているからなのか、日中混み合うエレベーターには誰ひとりとして乗っていなかった。シースルーエレベーターからは西日が差し込み、狭い空間がオレンジ色に染まっている。夏至を迎えて日が延びたこともあり、19時になるというのに外はまだ明るかった。今日の頑張りのおかけで、晩酌の缶ビールがさぞかし美味いだろうなんて考えていると、途中の階でエレベーターが止まった。扉が開くと、重そうな書類を両手に抱えた女性がひとり立っていた。 『お疲れ様です』 「......お、お疲れ様です」 彼女だった。 突然の出来事に混乱して、状況把握ができずにいる。落ち着け岳、と自分に言い聞かせてから、両手が塞がっている彼女に階数を尋ねた。 「えっと、...何階ですか?」 『あ、私も同じ階なので大丈夫です』 ありがとうございます、と言って僕に微笑む彼女。僕は夢でも見ているんじゃないかと思って自分の手の甲をつねってみたが、普通に痛い。こんなビッグチャンスを逃したら、二度と巡って来ない気がした。さすがの僕も意を決して声をかける。 「あの...事務部の、方ですよね?」 『ハイ、そうです。...えっと、』 ...まずい、失敗した。絶対に怪しいヤツだと思われた。なんで事務部ってことを知ってるんだって話だよな。そんな質問されたら誰だって気味が悪いに決まってる。とりあえずこのチャンスを逃すことだけは避けたい。 「...あ。それ、僕も手伝います。半分ください」 『え?そんな、悪いです』 「大丈夫です、同じ階だし。持ちます!」 『...じゃあ、お願いします』 そこでタイミング良くエレベーターが止まる。なんとか彼女を繋ぎとめることに成功してひと安心したけれど、本番はこれからだ。都合良く、彼女が持っていた書類は僕の部署に運ぶものだった。
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