第一章

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見える結果が全てじゃない。 愛しかったあの人が私に残したその言葉、 記憶の片隅にずっとある。      あの日、急な豪雨に見舞われて傘を持たずに出掛けた私は駅の改札口で立ち尽くしていた。天気予報はハズレ。雨が降るなんて言ってなかったのに...なんて、今更悔やんでもしょうがない。季節は春といっても夜になれば気温も下がり肌寒く感じる。その日は大学の同窓会に呼ばれ、久しぶりに会う友人たちとの会話が弾み、気が付けば終電の時間になっていた。なんとか終電には間に合ったものの、駅にタクシーの姿はない。タクシー会社に電話をかけても回線が混み合っているのか繋がらなかった。最終手段として電話をかける相手はいたが、その日の私は何故か躊躇してしまう。その理由には、同窓会で会った人物が関係している。 「久しぶりだな、森野」 少し掠れていて、低くて、甘い声。それは忘れもしない記憶の一部。私の通っていた音大でピアノ講師をしていた桜井先生が、私の名前を呼んだ。華やかだったはずの私の大学生活は、この人の手によって全て奪われてしまったと言っても過言ではない。それほど、私の中での先生の存在が大きくなり、無視できないものになっていたから。     
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