タカアシガニ

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タカアシガニ

水槽の中にいるタカアシガニは、とてもゆっくりとした動きで、長い脚を伸ばしては縮めていた。せわしなく泳ぎ回る魚よりも、この大きくて静かなタカアシガニのほうが、見ていて心が落ち着く。 「このカニさん、とってもおおきいね」 「そうだね。カニのなかでは一番大きい種類なんだって」 「おおきなカニさんも、こどものころはちいさいのかな?」 「赤ちゃんとか子供のうちは小さいだろうね。脱皮してどんどん大きくなるんだよ」 「カニさんにも、パパとママっている?」 「オスとメスがある動物だから、パパもママもいるよ」 「このカニさんはひとりだから、さみしいかな」 「うーん、寂しいかもしれないね」 「……わたし、ひとりだったらさみしいな」 タカアシガニから娘に目を向けると、泣いていたので、あわてて抱っこしていつものように頭を撫でてみたが、娘は泣き止まない。 「どうしたどうした、パパもママもいるよ。ほら、ママ向こうの水槽のところにいるよ」 「うん…… あのね」 「大丈夫だよ何も怖いことはないよ」 「あのね、わたし、パパもママもだいすきなの」 「……そう、ありがとうね。パパうれしいよ。ママもきっとそれ聞いたらうれしいと思うよ」     
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