第一章 予期せぬ運命

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 心優しい母が作ってくれた朝ご飯。俐斗たち一家はそれを思い思いに食していた。父と母と、俐斗とその弟の彩斗の四人家族。よくある一般家庭の朝の風景だ。 「無計画な奴らだ」 朝のニュースの感想のひとつを俐斗はボソリと呟いた。どっかの会社の不祥事に対してだ。無論、完璧に計画を立てていても、不祥事を起こしてはいけないと俐斗は思っていたが。 「出たよ、にーちゃんの完璧主義」 「うるさいな」 ――身内の性格について逐一文句を言って、何になるんだ。  「行ってくる」 「テスト、頑張るのよ¬ー」 「あいよ」  今日も退屈な世界に足を踏み出す。いつもとなんら変わりのない、つまらない一日が始まる。  俐斗が外に出ると、太陽はすでに空高く昇っていた。 「おはよう、俐斗」 「ああ」 ここらで合流するのも、俐斗は計算積みであった。あくまで珀が寝坊しない限りの話なのだが。 ――いつも思うが、その髪型は熱くないのだろうか。 男子にしては、長めの髪。もともと色素が薄い蒼輝の茶色い髪は、太陽に照らされ、さらに日本人離れした、薄い色に見える。 「どうかした? 俐斗」 「いや、何でもない」 十センチも上から見下ろされたのでは、答えづらかった。 珀は俐斗よりも背が高い。俐斗だって、決して背が低いわけでもないが、珀は特別背が高い。 ――こいつ、いつも明るいけど、病気なんだよな。 ひたすら、背が伸びていく病気。筋肉があまりつかずに、背だけが伸びていく。珀の体型は、針金のようにヒョロヒョロしている。 「ああもう、どうしよう……。今日、テストだよ?」 何の脈絡もなく、珀は言った。 「無計画でいるから悪い。前に悪かった所を徹底的に復習し、授業で悪かった所もまた徹底的に復習すればいい。簡単なことだ」 「うう、俐斗はそうかもしれないけどね?」 「珀だって、頭が悪いわけじゃないだろう?」 俺よりは悪いが、という言葉は心の中にしまっておく。 「いつも五教科合計、四百七十点越えの人に言われてもなー」 自信出ない、と珀は言う。
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