第一章 予期せぬ運命

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――こんな風にして、珀もいづれ、俺の傍から離れて行ってしまうのだろうか。完璧すぎて自分が駄目な人間に思えてくる、と言って。 「で、俐斗の今回の目標は?」 「勿論、全教科九十五点以上だ。高二の夏だからと言って、気を抜くわけにはいかないからな」 笑いながら俐斗は言った。感情があまりこもっていないような乾いた笑い。 「……珀。最近思っていることがあるんだ」 「何?」 「こんな人生やり直せるなら、やり直したい、と。馬鹿な願いだよな」 変なことを言ってしまった、と俐斗は思った。珀は、しばらくして答えた。別に、反応に困っていたのではない。答えに困っていた。 「今までがどうであっても、これからの行動を変えていくことはできるんじゃないかな? 」 まさか真面目に言葉を返してくれるとは思っておらず、俐斗は驚いた。笑って流されるかと思っていた。 「ありがとな、珀」 「え?」 「いや、なんでもないよ」 「そっか」  「ああー、終わった、終わった。二つの意味で」 ――これだから、無計画な奴らは……。終わった、終わったというほとんどの人は、二つの意味を込めて言っている。 「まあ、俺らがどんなに頑張っても一位はあの俐斗サマだろ?」 「だよなー。やっぱ天才は違うよな」 ――勝手に言ってろ、馬鹿どもが。別に、俺は天才なんかじゃない。お前らは、俺に勝る努力をしたのか? 俐斗は、ぐちぐち言う彼らに、そう問い質したい気分だった。ただ、それを行動に移せば、さらに面倒な事になるのは明白だった。 「俐斗、どうだった?」 「ああ、いつもと変わらな―――」 そう言いかけた俐斗は、急に頭が締め付けられるような感覚に襲われた。 「だ、大丈夫!? 俐斗、保健室に行った方がいいよ!?」 急に椅子から崩れ落ちた音に珀だけが反応したわけじゃない。皆が反応した。 ――こうやって来てくれるのは、珀だけか。ま、別にどうでもいいが。 「……行ってくる」 「うん……」
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