第一章 予期せぬ運命

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「もう、つべこべ言わずに飲みなさい」 湯気を立てている、いかにも熱そうなココアを口にする俐斗。 ――やっぱり、熱い。けど美味しい。なんだか、気分がほわほわしてくる。 「どう、おいしい?」 「はい、とっても」 「それは良かった」 先生は、さも満足そうに笑った。俐斗が、眠たげにしている事を周知の上で。 ――まずい、瞼が重いくなってきた。やっぱりこのココアには何かあるのだ。 俐斗は襲い来る睡魔に抗おうとしたが、それは無駄なことだった。 「貴方ならきっと……」 俐斗は一介の養護教諭が、美人な顔にそぐわぬ笑みを浮かべていることなど、知るよしもなかった。そして、深い深い眠りの底へと、落ちて行った。それはもう、死ぬ寸前の深さの眠りにまで。
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