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「 あら、何? この子」
「明らかに転生者または、転移者ですね。何もなかった道端に急に現われましたから」
「どうする!? どうする!? 魂、狩っちゃう!?」
ロレンスは幾分驚いた。道端に、転生者やら転移者がいることに、ではない。随分整った顔立ち。美しい紺碧の髪は、肌の白さを際立たせていた。身体は全体的に細く、華奢。しかし、どう見ても男である、という事実に驚いていた。
「待て、この子は俺が拾う」
――本当に、人間は面白い事を考える。楽しくなりそうだ。
「え、拾われる? その子を気に入られたのですか? ローレンツ様とあろうお人が。妬けてしまうわ」
「ローレンツ様がそうお決めになられたのなら構いませんが……。これは人間ですよ? いくら、転移者でも……」
全然構ってるよね、と言おうとしたローレンツだが、後が面倒だということに気付いた。
「そんなに気にすることでもないよ。これはただの暇つぶしだからね」
「えー? いいなー、ローレンツさん。僕も、この子気にいったんだけどなー。それに、ローレンツさん、もう人間ひとり拾っているじゃないですかー」
――君は、人のことを気にする前に、言葉づかいをどうにかしようか。
全く持って、うるさい外野に、困り果てていた。ローレンツも含めたったの四人だけだというのに、いつもまとめるのに一苦労だ。
「今日はここで解散だよ」
「わかりました、ローレンツ様」
「了解しました」
「はいは~い」
ローレンツ以外、誰もいなくなると、辺りは静寂に包まれた。
「どれだけ五月蠅いんだ、あの子らは」
魂を狩るときは穏便にしなければならない。そのことを彼らは分かっていながら、実行してはいなかった。とんだ問題行動である。
「さて、と」
目の前で横たわり、意識を失っている少年を仕方なく担ぎあげる。
――こういうことは女の子にしかしたくないんだけどね。でも皆の前で言った手前、置いていくわけにもいかないし。
ローレンツは、困っている他人を放っておけない性格なのだ。しかし、それは職業柄、大きな問題があることにローレンツは気付いてすらいなかった。とんだ問題行動である。
「僕も帰ろうか」
この子が目を覚ました時。そして、自身の正体を知った時。一体、どんな反応を見させてくれるのだろうか。ローレンツは今から楽しみで仕方が無かった。
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