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清々しいほどに晴れ渡った青空を見上げながら、俺は友人と共に突如出現した何かの陣に引き込まれた。
死んだなと思っていたがどうやら違うらしい。
辺り一面真っ白な空間を眺めながら上か下かもわからない場所にポツリと俺という存在があるという事だけが現実だった。
「此処は何処なんでしょうね?」
『此処は僕の部屋さ、巻き込まれ君』
その言葉と共に翼を羽ばたかせながら降り立った金髪碧眼の見目麗しい青年が目の前に立つとここには見えない床がある事が分かる。
まじまじとその姿を見ながら彼の向かいに居る学生服の冴えなそうな黒髪の前髪で顔の半分を隠している青年が口を開いた。
「……………新手のコスプレイヤーですか?背中の翼、良く出来てますね」
『ふふっ、そうだろう?って、違うよ。これ本物だからね?』
「…ふむ、確かに。この手触りの良さと動き方からして偽物というわけじゃないでしょう」
翼を動かしてみせる目の前の青年の翼に躊躇なく触れながらその羽の滑らかさと駆動を確認している青年は何処か声が弾んでいる。
呆れながらも暫くは好き勝手にさせていたようだが擽ったさとしつこさに金髪の青年が先に身を引いて再び話し始める。
『もうそれくらいでいいだろう?と言うか、しつこいんだけど。どんだけ興味あるのさ?』
「本物の翼なんて触れる機会そうそう無いですしね。ところで、俺は死んだんですかね?」
『……遠慮ないよね、巻き込まれ君の癖に。いや、君は死んでいないよ。まぁ、このまま行けば死んじゃうけど面白くないじゃない?』
「まぁ、俺は構いませんけどね。特にこれといって未練もありませんので」
『えー?君の友人がもう異世界に召喚されているのに?』
「もう巻き込まれるの嫌なので。彼、五月蝿くて人を巻き込むのが大好きで人が迷惑しようと知った事では無いと突き進む姿、正直ウザイんですよね」
肩を竦めながら興味もなさげに呟く学生服の青年に金髪の青年は楽しげに目を細めた。
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