Episode.0

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自称神の申し訳なさそうな顔に白夜がほだされる事はないが深い溜息を吐くと手を差し出す。 白夜の差し出した手の意図が分からず首を傾げる自称神を見ながら呆れたようにその唇から言葉が紡がれる。 「…どうせ、異世界に行く事には変わりないのでしょう。神だという貴方に叶えて頂きたい条件を提示しようかと思いましたので」 『あ、あぁ…そういう事ね。なら、その条件に同意しその名を書くと提示された条件に反する事が出来なくなる制約の羊皮紙に書いてもらうよ』 「便利な物があるんですね…。これも何枚か頂けるように書いておきましょうか」 何も無い空間から羽ペンとインク瓶、羊皮紙を出現させ手渡してくる自称神からインク瓶を残し白夜は受け取ると煩わしい前髪を所持していたシンプルなヘアピンで留める。 その素顔を見た自称神は小さく息を呑みつつインク瓶を持つ係を自然とやらされながら羊皮紙に条件を記載している白夜の姿を見ている事しか出来ない。 「あまり見られるのは好きではないんですが?」 『え、あ…ごめんよ。綺麗な顔をしているのになぜ隠しているんだい?』 「…面倒臭いからですよ。周りで騒がれたりするのは好きではないんです」 淡々と告げる白夜の面立ちは整っていて冷酷な印象を持たせる切れ長の瞳に綺麗な鼻筋や薄い唇は女子受けのしそうな美青年の持ち得る容姿だった。 神でさえ惚れてしまってもおかしくない程の白夜の容姿に自称神は何処となく見知った神の顔を重ねたが目の前に差し出された羊皮紙に意識を戻しては書かれた内容に目を通しては絶句する。 『…君、こんな条件で良いの?』 「ええ。俺は、あのバカと関わりたくないのでそれを要点に後は幾つか欲しい物と知識を強請っただけですよ」 『いや…それは見て取れるけど不老不死とか…そういうのはいいの?』 「人の一生は短いからこそ輝くものでしょう。成り行きでなってしまうなら致し方ありませんが神に強請る様な事項ではありませんよ」 さも当たり前だと言うように返される白夜の言葉に幾度か異世界へと人や魂を送り出した自称神は感嘆しつつ前髪が降ろされるまでその端正な顔立ちを羊皮紙に目を通す振りをしながら観察する。 頭に残る疑問を振り払うように視線を外しては羊皮紙の浮かび上がったサイン欄に自称神は己の名前を書いた。
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