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episode.4
帝国襲撃からひと月が経ち国の復興もかなりの速さで進められ大分落ち着きを取り戻し国民達も前の賑やかさを取り戻し始めていた。
ハクアの居た山猫亭も一時的な宿泊施設として開放されていたが今では避難してきていた者達も自宅に戻っていき落ち着きを取り戻していた。
「ひと月でここまで復興出来ちまうなんてやっぱ王都ってすげぇんだなぁ」
「アスティア!まだ掃除せねばならぬ所が沢山あるのだからサボるんじゃない!」
「へいへい…そういやハクア師匠は?」
「本格的にギルドと喫茶を開くからと宣伝も兼ねて外出しておる」
「今回の騒ぎで凄い宣伝になったと思うけど…やっぱ、店開くとかなると大変なんだな」
汚れた床にモップを掛けているアスティアがカウンターを濡れた布巾で拭いているルミニアに怒られていた。
マーテルとダンゲの姿はなく今はこの二人しかいない。
「襲撃の時にはすんごい人でごった返してたのにみんな帰っちまったと思うと寂しく思うぜ」
「仕方なかろう。傷が癒えれば己の住処を直しに行くのは当たり前じゃろう。さて、我の方は終わったからハクアの作っていったドーナツを食べようかの!」
「…あんまり食うと太るぞ?」
「消し炭にして欲しいみたいじゃの?」
「すみませんでした」
ルミニアの周りに青白い炎の玉が数個浮かんだのを見てはアスティアは即座にその場に土下座をして謝罪を述べる。
何の気無しに言葉を吐いてはルミニアを怒らせるアスティアだが純粋に心配しているのも分かるので憎むに憎めない所もあるのが罪深い。
キッチンへと向かう後ろ姿を横目に見ながら掃除に意識を集中させつつアスティアはハクアの帰還を待つのみだった。
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