神様の殺し方

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 僕はフレアの男を遠くから見た。そして彼の言うところの太陽神フレアがいかなる存在か考えた。きっと信者から金を巻き上げてぜいたくな暮らしをしているんだろう。男は演説を終えると満足した表情を浮かべまた同じ話を繰り返す。そこからはまるで機械のように同じ話を繰り返すばかりだった。まるで同じ映画を見続けているように。しかし、八回目の演説では様子が違った。一人の若い男が演説を熱心に聞いているのである。フレアの男は新たな信者を得たり、と言わんばかりにさらに声高らかに演説を繰り返した。若い男は神様云々のくだりに差し掛かると演説を遮った。 「神様の殺し方を知っているか」  フレアの男はきょとんとした顔をした。そして言いようもない怒りが顔を覆う。 「き、君は一体何を言っているんだ?太陽神フレアが死ぬはずないだろう。ありえない、ありえないんだ。冷やかしならどこかに行けよ」  それでも若い男は引き下がらない。むしろフレアの男の神経を逆なでするようにゆっくりとした口調で話す。 「俺はユウタっていうんだ。あんたの名前は?お互いに名前を知らなければ議論もしづらい」  ユウタ、よくよく見れば僕の隣に住んでいる男であった。確かにふざけた奴ではあったがまさか宗教家に喧嘩を売るなんて。僕はこの喧嘩を見届けないといけない。なぜかそう思った。 「私はトゥモローだ」 「変な名前だな。それは本名か?それともフレアにつけてもらったのか?どちらにせよ神様の殺し方を教えてやるよ。これでフレアを殺すといい」  ユウタはもったいつけながら話す。トゥモローは明らかにユウタのペースに飲み込まれていた。 「いいか、神様なんていい加減なものは人間様がいなければ生きていけないんだ。分かるか?神様は人間に信仰されなければ生きていけないんだ。人間の信仰あって初めて生きていける。神様がいて信仰があるんじゃない。信仰があって神様があるんだ。つまり人間が信仰を放棄すればいくらでも神様を殺すことができるんだよ。人間を殺すには準備がいるが神様を殺すには準備はいらない。いるのは心構えだけさ」  トゥモローはその勢いに押されていた。言い返せないでいた。そして神様の存在を疑い始めていた。それは人間の可能性に気づいたと言ってもいい。そのとても小さな疑問はどんどんと膨らんでいきそして爆発する。
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