神様の殺し方

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「トゥモロー、いつまでも神様を信じていたら明日は来ないぞ。いいか、今こそ自分について考えるんだ。どうだ、神様はいないだろ」  トゥモローはぼんやりとした表情で頷いた。僕はその瞬間を見逃さなかった。人間が信仰を放棄する瞬間を見逃さなかった。そして、トゥモローは膝から崩れ落ちた。ユウタの陰になって何が起きたのかは分からない。ピントを合わせるとユウタがナイフを持っいることが分かる。 「トゥモロー、あんたは優秀な信者だと思っていたのに。信仰を捨てる奴は粛清だ。すべてはフレア様の御心のままに」  ユウタは足早にその場を離れていく。演説をしていた時には全く人が寄り付かなかったにもかかわらず腹から血を流して横たわるトゥモローに人が群がってくる。あたりは人が溢れてどんどんとその数は増えていく。そして限界まで膨らんだ風船のように破裂した。大きな爆発音。そしてそれを追い越すような勢いで広がる熱。衝撃が遅れて人々を吹き飛ばす。人々は紙切れのように引きちぎられ、宙を舞った。アスファルトはペンキをぶちまけたように赤く染まった。そして僕は破壊され、停止した。  これが2058年4月18日に駅前の交差点にある防犯カメラに記録された映像のすべてであった。そして僕が記録した最後の映像でもあった。
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