第1章 もしも浦島太郎が玉手箱を空けなかったら

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私たちが青年を追って村へたどり着くと、青年は壁に大きな穴の空いた家の前でうずくまっていた。どうやら、泣いているようだ。 「…………父上……母上……。」 青年がうずくまっている場所の先に二組の人骨が見えた。これは青年の両親の骨なのだろうか。私には分からなかったが青年はそれが誰の骨なのか分かっているようだった。 青年は言った。 「どうしてこんなことに……オレは昨日まで父上と母上と一緒にいたのに。」 この青年が言っていることが本当であるとすれば明らかに矛盾が生じる。人間が死後1日で白骨化するなど聞いたことがない。この村にはやはり何かありそうだ。━━異様に老朽化した建物。青年を除いては村人が1人もいないこと。青年の古くさい格好。そして、この状況を青年が把握しておらず、本人はつい昨日までその村にいたと証言していること。また、この青年はとても嘘をついているとは思えないこと。 その条件から導き出された答えはひとつだった。 ━━青年はタイムスリップしている。
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