上を見上げる人

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「ちょっと、江、誰だよ彼氏かよ?」 「お宅、もう関係ないんでしょ、いこ」 小川さんに背中を押された。 「黙って歩いて」 「ごめん」 「いいから」 「コウ!ごめん、今さらかもしれないけど、俺、別れた、あいつとはなんにもなかったんだ」 後ろから声がする、嫌だった。 小川さんの腕にギュッとしがみついた。 公園のはずれのコインパーキング。 彼は車で来ていた。 乗ってと言われ車に乗り込んだ。 黙ったまま、握りしめた手を見る事しかできなかった。 「予定変更だな、前を見て、酔っちゃうよ」 彼が手を伸ばしてきた、握る手を、ポンポンと叩いた。 「ありがと」 精いっぱい出した声だった。 元彼は五歳上だった、入社して半年で声をかけられ、交際。上司達も結婚かなんて騒いでいた。でも、違う課の女の声が聞こえてきたときには。 思い出したくない過去がよみがえってくる。 ここにいるのが、息苦しい。
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