上を見上げる人

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結局、次の日の夜に彼はやってきた。 昨日までのお礼に晩御飯を食べてもらった。そして彼は、車から紙袋を二つ私によこした。 「なに?これ」 「虫よけ」 「虫よけ?って、洗濯ものじゃん」 「そしたら日曜はゆっくりできるもーん」 お預かりします。 明日の晩、また来ます、ご飯よろしく そう言いながら、笑って帰って行った。 彼と出会ってから笑ってばかりいる自分がいる、うれしいな。 そして一度、彼の作業着を洗濯機で洗った。 外にかけるつなぎ なんか同棲してるみたい。 彼の行為は、正解だった。 そのあと私は彼に感謝した。 土曜日、鳴るチャイム。 外を見ると、そこには、疲れたような顔をした元彼が立っていた。 もう関係ない、シカと、あいつが悪い。 ベランダには、いっぱいに干した。雅紀さんの洗濯物が五月の風に揺れていた。 下をのぞくと見上げているあいつ。部屋に入った。 又なるチャイム ガチャッと鍵の開く音 ジャラ?バーン。 中にチェーンをしておいたのが伸びきったのだ。 「警察呼びますよ」 「話を聞いてくれ」 「聞いてどうなるの、もう終わったの、終わらせたのはあなたでしょ、かぎをかえして」 ドアのそばに寄った。 「あなたはあの時、私といる事より、あの人といる方を選んだの、だから私はすべて捨てて新しい道を進んだ。あなたがやり直したいと思うのは私じゃない、あなた自身。頑張ってください」 手を出した、めちゃくちゃ冷静、不思議。 カギが掌に落ちた、静かにドアを閉め、カギをかけた。
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