上を見上げる人

15/17
前へ
/47ページ
次へ
夜、彼が帰ってきた。 持ってきた二つの紙袋は、帰り、三つになっていた。 「増えた」 「かわいたからでしょ、タオル、汗で、クチャイ」 鼻をつまんで見せた。 匂いを嗅ぐ、臭わない。ごめん、漂白剤いれました。 構わない、他の洗濯もの、いい匂い。私の匂いだという。 そうかな、くんと臭いを嗅いだ、彼が私の鼻をつまんだ。 「どうせ加齢臭だとか、いうんだろ」 「まだ早い、離せ!」 「そうなの?」 「ほら、部室とかに入ると臭う、アーそう、剣道部の匂い」 「俺、そんな臭い?」 「くさいかもー」 「フン、じゃあ、マーキングジャー」 「キャー」 作業着のまま抱きしめられた。汗と、ほこりの匂いとお日様の匂い。彼の匂いがした。 私の部屋の風呂に入り、また洗濯機にほおりこんでまわしてる。 かわいた下着と、ジャージのパンツをはいて、リラックスムード。 「はい、おまたせ」 「うまそ、いただきます」 ビールを買ってきたと飲み始めた、帰んないのというと、泊まるんだという。 「いいけど、襲うなよ」 「エー、んー、対処します」 「よろしい」 「いいのか?」 「わかんない、呑むの?」 立ち上がって冷蔵庫を開けた。 「ください」 洗濯物を外に乾かした、もう夏、朝日に当たればそれだけでかわく。 ソファに座る彼の足元に座って、テレビを見ていた。 何か、くっついていたかった。 「なにかあったの?」 「わかる?」 「なんとなく」 「するどいなー」 あいつが来た、合鍵で開けられた時、怖かった。 「中に入ってきたのか?」 チェーンがかかってたから入ってこなかった。 何か取られた物とかないのかと聞かれたけど、なさそうだし。 私の頭をなでる。 「恐くないよ、だって虫よけ効いたもん」 「江」 「ん?」 振り返ると、あごに手を当て顔を寄せた。彼とのキスはとても優しい。 キス、何も考えなくていい。 その後は体が溶けあうまで、抱き合った。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加