写真をとる人

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目の前を腕を組んで歩く男女。男性が明らかに俺たちのほうを見ている。俺は彼女の肩を引き寄せた。抱き合っているように見えるだろうか? すれ違う人 「カメラだせ」 「え?」 「カメラ、早く、後ろ姿取れ」 「はい」 カシャ 小さな音を立て一枚撮ったのがわかった。 座ったまま俺を見ている彼女。 「なに?」 「おりろ」 「あー、ごめんなさい」 「まったく」 「でもいいのがとれた」 そういって、俺の隣に座りなおし、買ってきたパンにかぶりついた。 「おじさんいくつ?」 「カンけーねえだろ」 「まあね、私いくつに見える?」 「そうだな、二十、二、三かな」 「へー、すごいな。みんな大体、高校生とか言ってくるんだ」 「そうだな、幼く見える」 「ありがと、でも二十九よ、来年三十」 「へー、見た目で得してるか、俺はだめだな」 「なんで?」 「来年四十」 残っていたソイスープを飲み干した。 「そっか、でも奥さんとか子供とかいるんでしょ、幸せそうな顔してる」 「はー、そうみえるのか」 「違うの?」 「俺まだ独身、結婚したこともない」 「あ、ごめんなさい」 「別に女じゃないからいいけどさ」 「・・・」 黙ってしまった。そろそろ時間、仕事に戻らないと。立ち上がった。 「あーそうだ、いいもの上げる、お礼と言っちゃなんだけど、はい」 印刷された大きな日付に目が行った、ン?今日? 「飲み放題券、今日までじゃんかよ」 「うん、よかったらきて、じゃあね、ありがと」 座ったまま彼女は手を振った。 バーか、たまにはいいかな。
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