本を読む人

8/12
前へ
/47ページ
次へ
雨は三日間降って四日目の朝やんだ ぬかるんでいる道は、夏の暑さを思わせるような、ムッとした空気を引き連れてきた。 「今日も無理そう」 仕事も積んでいて、お昼はいつもの時間には取れなかった。 「ちょっと遅れたけど、ちょうど乾いてよかった」 一時過ぎ、空いているベンチに座って、お弁当を広げた。 やっぱり、この時間、少ないな そう思っていた。 上を流れる車が、忙しそうに見える。 だいぶピンクになったな 上のほうから聞こえる笑い声に目をやった。 あ、彼だ! 周りには、スーツ姿の男性と、きれいな女性も何人か、彼の腕に絡めた腕。 やっぱりなー、そうだよなー。 箸を口に入れながら歩く人たちを目で追った。 「おっかしいの、ばかみたい」 勝手にいろんなことを想像して膨らませて、ありもしないことを想像した。 そうだよね。あたりまえだ。 そう言い聞かせ、アップルティーを飲んで、ため息 「さあて、仕事、仕事」 パンパンとスカートを払った。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加