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「全く、あいつらは週末の安息日をなんだと思っているんだ?これだから疲れを知らないサイボーグは」
機械都市「フォルテ」、その端にぽつりと存在する赤い屋根の家。
代用紅茶をすすりながら、不機嫌そうに山と積まれた書類を見つめる白衣の美少年がひとり。
「愚痴ってないでさっさと仕上げてください旦那様。これが終われば旦那様の大好物をお作りしますから」
無表情のまま、人工音声で主人の愚痴を跳ね返す、時代錯誤な燕尾服の男性型人型機械が一機。
「あっはっは!やっぱりファウスト君は手厳しいね愛弟子エリス君よ!しかし機械より機械らしいワーカホリックの君でも仕事の愚痴は言うんだね!Cainママおどろき!」
部屋にいくつも付けられたモニターの画面の中で明朗な少女のような人工音声で笑う、眼鏡の女性型AIが一体。なぜか頭に大量の花が咲いている。
エリスと呼ばれた少年は、がしがしと頭を掻き、書類に向き直る。
「お前が「ママ」とは笑わせるな。ああ最高の冗談だよ。
・・・今日は休息をとる日と決めていた。なのに急にこんなに「依頼」を持ってきやがって、全く。俺とて休みたい時はある」
その書類は、全て機械仕掛けの注文書だった。
エリス少年の仕事は「機械屋」。発注された機械仕掛けを作りあげるのが仕事だ。
それは身体を機械化した人間用の、予備の腕や足や臓器だったり、事務用や戦闘用、家庭用や愛玩用のアンドロイドやガイノイド、「人型機械」達だったりする。
・・・といっても。もはや人型機械と、人間を見分ける事は難しいだろう。
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