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この街が「機械都市」と呼ばれる所以は二つある。
1つは、住民の約99.9%がこの街を管理するAI「Dem」に跪き、Demの言うままに体を機械化した人間、「サイボーグ」であること。
それから、ヒトそっくりの自我を植え付けられた人型機械が人間達の善き隣人として、人に紛れ街を闊歩していることである。
エリス少年は、機械都市で唯一、完全に生身の少年であった。
「機械は機械。俺は俺だ。俺は師匠のように喜んで機械と一体化するなんていう変態じゃあないんでな」
・・・と、この街で一番のサイボーグ技師を跳ね除けたのである。
エリスは赤褐色の代用紅茶を飲み干し、無機質な白いプラスチックのコップを乱暴に置くと、一番上の書類を無造作に取り席を立つ。
「さ、仕方ないが仕事だ。ちゃっちゃと終わらすぞファウスト。」
「はい、旦那様。」
ファウストはもう既に外出用の外套の準備をしていた。
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