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「うん、でも。」
「大丈夫、私なら平気だから。」
健気な彼女らしい言葉だが、一抹の寂しさを覚えた。
君は、俺に会えなくても平気なの?
俺は、寂しいよ。
「本当にごめんな」
「いいって。心配しないで。お仕事、頑張ってね。」
甘えてすねてくれたりはしないんだ。
本当なら、そんな彼女の気遣いに感謝しなくてはならないはずなのに、一人寂しくなった。
「おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
通話アプリを閉じると、また携帯をポケットに押し込んだ。
いつからこんな生活になった?
そして、いつまでこんな生活が続く?
俺の人生ってなんなんだろう。
最近は、毎日、そんな不毛な考えが頭をよぎる。
大学から付き合っていた彼女とは、もう何年目になるだろうか。
仕事に追われるようになって、ほとんどの時間を会社で過ごす。
いったいいつから彼女の顔を見ていないだろう。
せめて声だけでも聞きたかった。
だが、ここは一応電車内。俺は、その気持ちをぐっと抑えた。
その時、またポケットの携帯電話が通知を告げた。
俺は、慌てて携帯を開く。
表示は美和子。
「もういい加減にしてくれ」
メッセージは、とても彼女の言葉とは思えなかった。
「美和子か?」
俺が速攻でそうメッセージを返すと
「違うよ」
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