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でも、なんだ、やっぱり私が書いた報告書ちゃんと読んでくれてたんじゃん、そう思った。
彼女の好きな食べ物、高校の時の部活動。全部私調べたもの。
そして、やっぱり先輩なんだなーとも思う。
情報をこんなナチュラルに会話にまぜ込めるってすごい。
こっちは言われてそういえば!ってなったっていうのに。
「そんなっ!わたし、大雑把だからなかなか柔らかい音が出せなくて…」
「でもさ、可愛いし、フルートが一番似合うよ」
「そ、そんなこと初めて言われ……あ、」
「言われた事、あるでしょ?」
楽しそうだった先輩の声が、ふと、落ち着いた声色になった。
そして、彼女は何か思い出したようだった。
「ずっと前ですけど…はい」
「…その人は?」
「いえ、そんな知り合いってわけじゃなかったから…。今はもうどこでどうしてるかなんて全然」
「…また会いたい?」
そう先輩が聞くと、彼女はちょっと笑って言った。
「会いたいですけど、でも、名前も知らないくらいですもん。」
「でもさ、人間の想いって案外すごいんだよ。想っていれば、いつかは…、なんて」
えーって笑いあう彼女と先輩の背中を眺めていたら、頭の中に響いた声。
…ほら、連れてきて。この人の運命の相手。
…えええ!?無茶ぶりじゃないですか???
…だいじょーぶ。だいじょーぶ。
あ、彼女食べ終るとマズイから、急いで。
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