【小説・掌編集】扉の隙間の向こうから

長続きしない彼

　私の彼氏はモテるが、何故か彼女が出来ても長く続かない。
　本人も気にしている様ではあったが、心当たりがないと言う。

　確かに彼は容姿も性格も特段問題があるわけでもないし、裏表の激しい性格でもない。
　同じゼミ生として友達付き合いをしていた仲としては、彼氏にしても十分な相手だと思ったので、正直ラッキー、としか思っていなかった。
　面識の直接ない、彼と別れた女の子にそれとなく別れた理由を訊いても、何故か話したがらなかった。

　理由は、初めて彼と夜を過ごした時に判明した。

　夜中に物音で目を覚ました私は、部屋の隅で、壁に向かって正座をする彼の姿を見た。

「ごめんなさい、ごめんなさぁああああい……」

　ひたすら何かに謝り続けながら、月明かりが差す薄暗がりの中、彼はその姿勢のまま、何度も何度も何度も、自分の頭を壁にぶつけていた。

　目を見開いて、私の方を見ながら、無表情に、ひたすら。

　彼が過去に何をしたのかは知らない。
　取り敢えずあれ以来、彼には会っていない。