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この時、十兵衛と父宗矩の間には、父が政に介入しすぎていたためわだかまりがあったのだ。
そこに来て将軍家光からの逆鱗にふれ、小田原に流されたと言う訳で…
十兵衛には些か複雑な思いであった。
文には、まだ続きがあった。
『お主には、切り捨て後免状を持たす。お主の剣の修行にも役立ちよう…。では、期待して報告を待つ』
公儀隠密だと?本来なら素っ破の役目…。しかし、まだ見ぬ兵たちとの死闘に胸踊る自分もいた。剣の修行こそすれ、実戦で使った事がほぼないからだ。自分の力量、柳生新陰流を試すのに持ってこいであった。
「カラスよ、身支度を致せ!明日小田原を発つ」
「文には何と?」
「ここでは言えん、お上からの御達しだ」
「では御奉仕が決まっので御座りますな?」
「うむ…」
そう言うと十兵衛は席を立ち上がり、銭を机に置き、カラスと共に店を出て急ぎ屋敷へと足早に戻っていった。
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