隠密柳生の剣

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明後日、二人は身支度を整え、小田原の屋敷を発った。 東海道を西に上る。先ずは箱根山の関所を通らねばならない。 十兵衛は歩き易いように、黒装束に身を包み、袈裟を被って旅人を装った。 カラスは葛籠を背負い、商人風の出で立ちで旅立った。 箱根の湯元につく頃に、思い出したようにカラスが一言いいはなった。 「親方ぁ、気を付けておくんなまし。この辺りでは最近、山賊が出るらしいでやんす。小田原の大久保殿も手を焼いているみたいでやんすよ」 「山賊かぁ…あい、わかった…」 ちとひねくれて、酒浸りになっていた十兵衛も、剣術の修行を怠っていた訳ではなかった。体がなまって仕方なかったのだ。 実戦で使えると思い、ふしだらだが山賊が出るのを期待して待っている自分がいることに気付いた。 しばらく山道を進むと、期待通りと言うか、予想通りに山賊が現れた。 彼等は、馬にまたがい、旅の女性を囲い襲っているではないか。 馬?道中、騎馬兵に出会う事はなかった。どこからきたのだろうか?少し不可思議に思った。 「カラス!」 「了解でさぁ」 二人は駆け足でその場にかけよると、山賊を一喝した。十兵衛が大声を張り上げた。 「お主ら!おなご1人に大の男5人など卑怯ではないか!」 山賊は5名いた。いかにもと言うような出で立ちの男が、その声に気付き振り向き様に言った。 「何奴じゃ!」
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