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「名乗るものでもござらぬ!」
そう言うと十兵衛は袈裟を脱ぎ捨て、刀をぬいた。
「カラス!」
「へい!」
十兵衛の周りを取り囲むように、山賊たちが移動するのを見たカラスは、名前を呼ばれると同時に、旅の娘を安全な場所へと避難させた。
十兵衛を取り囲み、馬を歩かせながら周りを 回りながら威圧する山賊のひとりがいいはなった。
「うちらの仕事を邪魔するつもりか?」
「邪魔などとはけったいな!いたいけなおなごが絡まれてれば、見過ごすわけにはいかぬわ」
「何!?格好つけおって!ならば、この場で死ねい!」
そう言うと山賊どもは、十兵衛に四方から襲いかかってきた。
間合いを見切り、山賊たちの鎌や刀をなぎはらう十兵衛に業を煮やした山賊たちが次の手を打ってくる。
突如馬上から山賊たちの姿が消えたのだ。
「何!?」
かと思うと四方八方から手裏剣を浴びせられた。かろうじて、手裏剣を叩き落とした十兵衛であったが、やられるのも時間の問題だ。
囲いの外で様子を見ていたカラスは、それに気付いていた。馬上から馬の側面に身体を流し張り付いていたのだ。十兵衛からは死角になるため、消えたように見える。
カラスは咄嗟に棒手裏剣を、ひとりの山賊に投げつけた。手裏剣はうまい具合に敵方の臀部へと突き刺さった。
普通の商人だと思って気を抜いてた山賊はいひょうをつかれ、悲痛の声を上げ馬上に戻った。
「どうした?」
「奴は忍びだ!」
もうひとりがそれを聞いて馬上に身体を戻すと、二人がかりで十兵衛に襲いかかって行った。
二人の鎌が同時に十兵衛に降り注ぐ。それを弾き返した十兵衛は、返す刀で二人の盗賊を叩き切った。
すると苦悶の表情で、二人は馬から落馬して行った。
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