コウタの想い

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その日の夕方、朔也はくだんの男と帰ってきた僕の待つこの家に。そして浮気をしないで欲しいと頼む朔也に何故か裏切った男が怒りだした。  「てめぇ、うぜぇんだよ」  「またそうやって誤魔化すの、もういい加減にしろよ」  この部屋に朔也が恋人を連れてくることは殆ど無かった。今日は行かない、僕と過ごすと信じていたのに。立ちあがりざまに朔也の胸ぐらをつかんだ。朔也がまた殴られる。そう思った瞬間(とき)には考えるより先に身体が動いていた。振り上げられた拳は見事に僕の顔にに当たり、僕の身体は音を立てて壁に激突した。  景色が黒い雲に包まれていき、少しずつ視界が狭くなっていった。微かな意識の中、大粒の涙をこぼしながら僕の名前を何度も呼ぶ君の顔が見えた。その涙はやっぱり綺麗だった。  「先生ーーのーーなのでしょうか?」  「ええ、厳しいですね。後は……」  朔也が誰かと話している声が聞こえる、誰だろう?  「あ、先生っ!」  「どうしました?」     
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