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「気を付けろよ。」
そう言って、裕兄は私にランプを手渡した。
私は思わず裕兄に抱き付く。
「有難う。裕兄。私の我が儘聞いてくれて。」
「いいんだ。それで千賀子が幸せになれるなら。」
トントンと私の背中を優しく叩く裕兄。
私にとって裕兄はほんとのお兄ちゃんのようで、裕兄にとって私は世話のやける妹。
それは昔から変わらない。
「ほら、早く行きな。怪しまれる。」
「・・・うん。」
名残惜しそうに裕兄を振り返りながら通路に足を踏み入れた。
黴臭さが一層強くなる。
何処までも続く闇に不安で押し潰されそうになりながらも一歩一歩、歩を進める。
もう後戻りは出来ない。
これは自分が決めた事なのだから・・・。
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