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第4章 生活
あれから三日が過ぎた。
ロボットは、一緒に暮らしてみるとなかなかいい働きぶりだった。
掃除、洗濯、料理と一通りを黙々とこなし、終わるとじーっとしている。
僕は日中、仕事に出てしまうので行動の詳細は分からないが、紛失しているものも、財布からお金が抜かれている事もなかった。
特に得意なのは料理らしく、卵がトロトロのオムライスやウインナーがたっぷり入ったナポリタンスパゲティ、ケチャップのたっぷりかかったハンバーグなどはかなりの腕前で、大盛りに盛られたそれらを僕はいつも易々と平らげた。
そんな姿をロボットは、表情のない顔で冷静に見つめながら、いそいそと皿洗いをはじめるのだ。
ある時、ロボットが質問してきた。
「どうして、この新聞や雑誌を捨てないのですか?しかもこんな古いもの。
明日はゴミの日ですから、捨てられる様にしておきましょうか?」
「いや、いいんだ。そのまま置いておいてくれ。」
「全部、同じ時期のものですね。何か面白い記事でも載っているのですか?」
「おい、触んなよ!」
僕が大きな声を出すと、ロボットは元あった場所に雑誌を戻し、無言でまた掃除を再開した。
(ちょっと言い過ぎたかな。)
ロボットの後ろ姿を見ながら、僕は少し後悔した。
ただ、やっぱり自分にとって触られたくないものはあるのだ。
それにしても気が利くロボットだった。
日々のルーチンワークだけでは無く、僕の好みや嫌がる事も日々学習していき、毎日の家事に活かしていく。
本当に同居人が出来た様な感覚になる事すらあった。
こんなロボットが普通に世の中に浸透していったら、一体どんな世の中になるのだろう?
それが良い事なのか、悪い事なのかは今の僕には判断出来なかったが、大きく人々の生活が変わる事は間違いなかった。
革新的な人類の進歩とは、案外こうやって訪れるものなのかもしれない。
相変わらず、家事を無言でこなしていくロボットをぼんやり眺めながら、僕はとりとめもなく、考えを巡らしていた。
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