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   ★  どこをどう走ったのか。  気づくと、オレは、「花田(はなだ)市立中学校」と書かれた門柱の前に立っていた。  かたむいてきた日差しを、校庭が一心に受けとめている。  こだまするアブラゼミの声。  夏休み中、ほぼ毎日運動しているサッカー部員たちの姿が、今はない。 「……そうか。(まこと)は試合か……」  荒い息をつきながら、(あや)も、家で寝ていることを思い出した。 「くそ……」  ひたいに噴き出た汗をぬぐう。にぎったこぶしが、いまだになさけなく震えている。  さっき。浅山(あさやま)で。鬼婆(ハグ)(いかるが)さんをつれ去った。  人間サイズの妖精になれる、綾の体がほしいと。鵤さんを返してほしければ、かわりに綾をさしだせと。  そんなこと、だれがするかよっ!!  じだんだ踏んでも、鵤さんはもどってこない。 「くそ……どうすればいいんだ……」  恐れていたとおりのことが起きた。  鵤さんが巻き込まれた。  鵤さんは浅山の植物園の管理人だ。オレの亡きとうさんの親友で。オレのこともずっと気にかけてくれた人。  世話になりっぱなしだった。それなのに……。  ハグは、なんのためらいもなく、オレのまわりの人間をコマにする。 「やっぱり……オレがひとりで、なんとかするしかねぇのか……」 「あれ? 葉児(ようじ)ぃ? そんなとこでなにしてんの~?」  背中に、底抜けに明るい声がかかった。  ふり返ると、中学前の歩道を、中学生の集団が歩いてきている。みんな、うちの学校の青いサッカーのユニフォームを着て、スポーツバッグと水筒をかついでいる。  まじって誠が、くりくりの二重の目を見開いて、立ちどまっていた。
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