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「ね、ね? なんの映画観る? ヨウちゃんはいつも、なに観てるの?」
「オレは……とくに好みはないな。テレビでやってる映画とか。たまに話題のやつをレンタルで借りたりとか。映画館に来たのは、三年ぶりくらいだよ」
「え~? めっちゃ久しぶりじゃん~」
「綾は?」
「あたしはね~、ディズニーのプリンセス系が好き~」
「今は、そういうのはやってないな……」
ヨウちゃんは、上映表に目をこらしてる。
「あ。じゃあ、あたし、このファンタジー観たい!」
あたしは映画のタイトルを指さした。ヨーロッパの児童文学が原作の、魔法が出てくるハリウッドもの。最近話題らしくて、テレビでよくCMを見かける。
「オッケ。十時二十分からか。時間的にもちょうどいいな」
あたしたちは恋人つなぎで、チケット売り場の列にならんだ。
二時間半後。
ショッピングモール一階のフードコートで。
あたしはケラケラ、笑い転げてた。
「……綾。いつまで笑ってんだよ?」
向かいの席で、ヨウちゃんはふてくされて、ハンバーガーをほおばっている。
「だって、だってぇ~っ!! 映画観てるときの、ヨウちゃんのリアクションっ!」
ヨウちゃんの怖がりが発動するのは、お化け屋敷だけじゃなかったみたい。
子ども向けのファンタジーだから、本気で怖いようなホラー要素はないんだけど。アクションシーンも入ってるから、たまにびっくりさせるような演出をしてくる。
フェイントをかけて、岩が飛んできたり。頭の上からとつぜん、ゴーストがあらわれたり。
そのたんびに、ヨウちゃんてば、ビックビク。ドラゴンが火を噴いて、主人公に襲いかかったときなんて、「ひっ!」って、イスから腰を落としそうになってた。
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