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「鵤さんがヤドリギに閉じ込められたとき、とうさんに会ったんだ」 「……え?」  ヨウちゃんが、口元を少しほころばせた。 「鵤さんは、とうさんから、オレへのメッセージを預かってた。そのメッセージの中で、オレ、とうさんに言われたよ。フェアリー・ドクターは継がなくてもいい、オレはオレの好きなように生きろって」 「……ヨウちゃんは……ヨウちゃんの好きなように……?」 「ああ。けど。好きなことしろって、急に言われてもな……」  ヨウちゃんはあたしの左手から手をはなして、自分の首後ろをさすった。 「ここ一年ほど、ずっと、書斎で文献あさったり、薬ばっかりつくってたから、ほかのことが見えてこなくてさ。 やることがなくなって、とまどって。また図書室で妖精系の本、さがしたりして。そしたら、卯月先輩につかまって、綾を不安がらせるし。なにやってんだって、話だよな……。 で、とりあえず、部活に入ることにした。綾……オレ、バスケ部に入ろうと思ってる……」 「……そっか。うん、ヨウちゃんらしくて、すごくいいよ。やっぱりヨウちゃんは、体動かしてるときが、一番カッコイイもん」  パッと、あたしの右手からも、ヨウちゃんの手がはなれた。 「あれ?」と思ったら、ヨウちゃんは、きょとんとあたしを見おろしてる。 「……ごめん、綾。もう一回、言って」 「え? なにが? ヨウちゃんらしくていいよって?」 「……じゃなくて……そのあと……。オレが……その、体動かしてるときがどうだとか……」 「えっと……。あ、『カッコイイ』?」 「うわ……」  ヨウちゃんは、自分の口を手のひらで隠した。 「綾っ! オレ、やるからっ! マジでやってやるからっ! バスケしまくって、大会の選手になってやるっ! そしたら綾、ぜったいに応援しに来いよっ!! 」 「う、うん。行く!」  あたしは、ぐっと両手のこぶしに力を込めた。
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