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神さまの力
魔法歴、という暦がある。
素直に見れば人間が魔法を使えるようになってからの暦だと思うだろう。
けれど、この世界のそれは違う。
魔法歴1年はこの世界の創造主が世界を作るのをやめてしまった年だ。
創造主は自分の力を分けた精霊という小さな生き物を作り、この世界のあらゆる場所へ散らばせた。
そのおよそ500年後、長きに渡る戦闘によって精霊の力を人間が手に入れた。
そのために、僕たちが今使っている魔法は神さまの力である、というのがこの世界の常識だ。
だから人間と動物の違いは大きかった。
だから魔力が弱い人間と強い人間の扱いの違いは大きかった。だって神さまの力を持っていないということなのだから。
これは当然に差別を生んだ。不平等を生んだ。理不尽を生んだ。そして戦争を生んだ。
魔力量が強さの象徴ではないこの世界で、戦争は長引いた。およそ2,000年の戦争の途中で、人類は気づいた。
この世界の目指すべきは「平等」であると。
魔法なしでも誰もが快適に過ごせる世界でなければならないと。
魔法は神さまに与えられた「才能」でしかないと。
そうして人類は戦争をやめ、文明は発展した。
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