67人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっ!文目氏?まさかね」
フトシは自分の目を疑ったが、確かにそのトレーラーヘッドは文目のものだった。それでもフトシは信じられなく、眼鏡を外して目をこすりかけ直すが、やっぱり文目の車だ。
「何かあったのか?」
いつもの文目と違った怪しい挙動に不安を感じ、フトシは自車を降りてトレーラーへ向かった。そして、再確認するが間違いなく文目の車だ。しかしだ。事もあろうか、全長16mほどもある車両が4車線全てに渡り、道路を封鎖しているではないか。
「ちょっと文目氏!どうしたの?渋滞起こしちゃってるよ」
気をつけながら、フトシはトレーラーヘッドの横まで行き、運転席に声を掛ける。ところが反応がない。窓は開いているので聞こえてるはずだ。
「文目氏!聞こえてる?何かあった!?」
フトシがもう一度、声を張って呼びかけてみると、窓からぬぅっと人影が現れた。が、思いもよらぬ事が起きた。
「あぁん?なんじゃ文句でもあるんかいや!?こっちゃ精一杯やっとんやでちょっと待ちぃ」
前髪ぱっつんの黒髪ロングヘアで顔の半分くらいある大きなサングラスをかけた威勢のいいお姉さんだった。フトシはビビってしまいその場で固まってしまった。
(え?だ、だれ?ヤバい)
「ん?あんた……会ったことあるなぁ!そやそや、以前アチキの追っかけしてた人や!な?そやろ!な!なっ!」
(いやいや、あなたの様な人とは関わったことありませんよ?いや、アチキって……)
「そや!あんた、確かフトシって言ったなぁ!?なあフトシ君、助けてや!」
(ちょちょちょちょちょちょっと!なんで僕を知ってるの?)
「なぁフトシ君!後ろ誘導してや。暗くてよぅ見えんのよ」
当然だが、サングラス外して窓から後ろ見ればいいのに。そう思っていても、とてもじゃないが、見ず知らずのお姉さんに気圧された今のフトシには口に出す事は出来なかった。そして、なんとかしてこの場を去りたいフトシは「僕はフトシ君ではありません。人違いです!さよなら」と言って急いで車に戻り、走り去ったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!