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「……てな事があってさぁ。おかげで文目氏とのランチ忘れて、後から電話で2時間もお説教だよ?どう思う五十川氏?」
「ハイハイ、『お説教だよ?』の顔が嬉しそうですね。ですけど気になりますよね、そのトレーラーの運転手。モンちゃんの車に乗って、一体何を……?」
鈴とフトシが推理ドラマさながら悩んでいると、満子が仕事を終えて事務所へ入って来た。
「何をって、そりゃ仕事だろ?2人してなに間抜けな顔してるんだよ。それより鈴、外でワイルドなお姉さんが呼んでるぞ。アメリカンなバイクに跨ったボンテージのお姉さんが」
「え、わたしですか?誰だろ?」
事務所の中から外を窺うが、近寄りがたい雰囲気以外はなにも分からなかった。
「うぇ〜、やだなぁ。全身真っ黒!サングラスまでして……誰ですかあのパッツン前髪の人。太さん、一緒に来てくれませんか?もしもの時は太さん!お願いします」
「もしもの時って、僕に務まると思う?」
僅かに沈黙が生じたが、鈴がうなずくとフトシもうなずいた。そして鈴が外に出ると、フトシは少し離れて様子を見る事にした。
(後ろからじゃ五十川氏の表情が分からないな。相手のお姉さんも……?)
鈴の様子は分からないが、お姉さんの様子からして2人はどうも知り合いらしい事は伝わって来た。
(あんな人と知り合いなのか。五十川氏ってもしかして昔はやんちゃな女子だったのか)
すると、鈴たちの様子を離れてみていたフトシに気付いたのか、ワイルドなお姉さんがいきなり大きな声で喋りかけて来た。
「あ〜っ!フトシ君やんか!!ちょっと!こっちゃ来ぃなあ!早よ!おいでって!」
(うわっ!あの喋った感じ、あの時の!)
「なぁ!!えぇから早よこっちゃ来ぃや!フトシ君!」
「人違いです!僕はフトシ君ではありません!!ではさようなら!」
お姉さんに気圧されたフトシは、慌てて帰った。
「なんやフトシ君!あの時と同じ事言うて、挙句逃げてしまうなんて失礼やわ」
お姉さんは不満な面持ちで鈴に言った。
「仕方ないですよ!だって普段はそんなキャラじゃないですよね?わたしもビックリですよ?今でも信じられないくらい!」
「実はアチキも!」
「ぶーーーっ!っははははは!!やめて下さいよ!アチキって!!はぁ〜、腹筋崩壊」
ゴメンのジェスチャーをすると、お姉さんはバイクから降り、サングラスをとると黒髪をなびかせにこりと優しい笑みを見せた。
「鈴さん、お久しぶり!」
「ですね!桔梗さん!」
2人は久しぶりの再会を喜んだ。
「そう、鈴さん。私のこと、フトシ君には内緒にしといてほしいな」
「ははっ!分かりました!相当ビビってましたよ太さん!桔梗さん、ハンドル握って性格変わる人だったんですね!しかもバイクも」
「ほんとビックリしたのは私の方!新たな自分を発見したよ!しかもアチキって」
「ぶーーーっ!やめて下さいよ、そのアチキ。普段と真逆のキャラ!」
この夜、フトシはお姉さんの夢にうなされた。
64日目終了。
明日も元気に笑顔をお届けいたします!
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