64日目<お久しぶりです>

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「……てな事があってさぁ。おかげで文目氏とのランチ忘れて、後から電話で2時間もお説教だよ?どう思う五十川氏?」  「ハイハイ、『お説教だよ?』の顔が嬉しそうですね。ですけど気になりますよね、そのトレーラーの運転手。モンちゃんの車に乗って、一体何を……?」  鈴とフトシが推理ドラマさながら悩んでいると、満子が仕事を終えて事務所へ入って来た。 「何をって、そりゃ仕事だろ?2人してなに間抜けな顔してるんだよ。それより鈴、外でワイルドなお姉さんが呼んでるぞ。アメリカンなバイクに跨ったボンテージのお姉さんが」 「え、わたしですか?誰だろ?」  事務所の中から外を窺うが、近寄りがたい雰囲気以外はなにも分からなかった。 「うぇ〜、やだなぁ。全身真っ黒!サングラスまでして……誰ですかあのパッツン前髪の人。(ふとし)さん、一緒に来てくれませんか?もしもの時は太さん!お願いします」 「もしもの時って、僕に務まると思う?」  僅かに沈黙が生じたが、鈴がうなずくとフトシもうなずいた。そして鈴が外に出ると、フトシは少し離れて様子を見る事にした。 (後ろからじゃ五十川氏の表情が分からないな。相手のお姉さんも……?)  鈴の様子は分からないが、お姉さんの様子からして2人はどうも知り合いらしい事は伝わって来た。 (あんな人と知り合いなのか。五十川氏ってもしかして昔はやんちゃな女子だったのか)  すると、鈴たちの様子を離れてみていたフトシに気付いたのか、ワイルドなお姉さんがいきなり大きな声で喋りかけて来た。 「あ〜っ!フトシ君やんか!!ちょっと!こっちゃ来ぃなあ!()よ!おいでって!」 (うわっ!あの喋った感じ、あの時の!) 「なぁ!!えぇから早よこっちゃ来ぃや!フトシ君!」 「人違いです!僕はフトシ君ではありません!!ではさようなら!」  お姉さんに気圧されたフトシは、慌てて帰った。 「なんやフトシ君!あの時と同じ事言うて、挙句逃げてしまうなんて失礼やわ」  お姉さんは不満な面持ちで鈴に言った。 「仕方ないですよ!だって普段はそんなキャラじゃないですよね?わたしもビックリですよ?今でも信じられないくらい!」 「実はアチキも!」 「ぶーーーっ!っははははは!!やめて下さいよ!アチキって!!はぁ〜、腹筋崩壊」  ゴメンのジェスチャーをすると、お姉さんはバイクから降り、サングラスをとると黒髪をなびかせにこりと優しい笑みを見せた。 「鈴さん、お久しぶり!」 「ですね!桔梗さん!」  2人は久しぶりの再会を喜んだ。 「そう、鈴さん。私のこと、フトシ君には内緒にしといてほしいな」 「ははっ!分かりました!相当ビビってましたよ太さん!桔梗さん、ハンドル握って性格変わる人だったんですね!しかもバイクも」 「ほんとビックリしたのは私の方!新たな自分を発見したよ!しかもアチキって」 「ぶーーーっ!やめて下さいよ、そのアチキ。普段と真逆のキャラ!」  この夜、フトシはお姉さんの夢にうなされた。 64日目終了。 明日も元気に笑顔をお届けいたします!  
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