67人が本棚に入れています
本棚に追加
ーRed Comet Transport社内。
「なぁ、桔梗さん?なんでまたここに来たん?アイドルやってたのに」
勿体ない、と言いたそうな顔で文目は尋ねた。が、文目は少し焦りも感じていた。
「んー、そうね。ある人に刺激を受けて……かな?以前、将軍塚でね、私が足もとの宝石を掴もうとしてたら、その人は夜空の宝石を掴もうとしてたの。ああ、この人は上を見てるんだ。その時目が覚めたの。そしたら、私もこの人と同じ場所に立ちたい、そして私ももっと成長したいと思ったの」
「でもあのタイミングで引退なんて、やっぱりおかしいわ桔梗さん」
言われて当然の質問に、頷きながら繰り返した。
「だからある人の影響って言ったでしょ?その人のいる世界で私自身も成長したいの」
「……その、ある人って?だれ?」
「さぁ、だれかなぁ?ご想像におまかせします」
桔梗はクスリと笑ってはぐらかした。
「えぇ〜!教えてぇな桔梗さん!めっちゃ気になるやん!だれだれ〜?」
「そんなに?文目ちゃんもよく知ってる人」
「えっ!ま、まさかフトシさん!?」
文目の口からフトシの名が出た瞬間、桔梗は否定の言葉を喉元で飲み込み、文目を見つめてゆっくり言った。
「ご想像に、おまかせします」
「いけず!桔梗さんはいけずや!京都人!」
ペロっと舌を出し戯ける桔梗に、文目は頬を膨らませた。
(ゴメンな文目ちゃん。ちょっとだけ意地悪させてな。将軍塚での出来事は心にしまっておきたいの。鈴さんありがとう!私も頑張ります!)
最初のコメントを投稿しよう!