65日目<ひょんなきっかけ>

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 ーRed Comet Transport社内。 「なぁ、桔梗さん?なんでまたここに来たん?アイドルやってたのに」  勿体ない、と言いたそうな顔で文目は尋ねた。が、文目は少し焦りも感じていた。 「んー、そうね。ある人に刺激を受けて……かな?以前、将軍塚でね、私が足もとの宝石を掴もうとしてたら、その人は夜空の宝石を掴もうとしてたの。ああ、この人は上を見てるんだ。その時目が覚めたの。そしたら、私もこの人と同じ場所に立ちたい、そして私ももっと成長したいと思ったの」 「でもあのタイミングで引退なんて、やっぱりおかしいわ桔梗さん」    言われて当然の質問に、頷きながら繰り返した。 「だからある人の影響って言ったでしょ?その人のいる世界で私自身も成長したいの」 「……その、ある人って?だれ?」 「さぁ、だれかなぁ?ご想像におまかせします」  桔梗はクスリと笑ってはぐらかした。 「えぇ〜!教えてぇな桔梗さん!めっちゃ気になるやん!だれだれ〜?」 「そんなに?文目ちゃんもよく知ってる人」 「えっ!ま、まさかフトシさん!?」  文目の口からフトシの名が出た瞬間、桔梗は否定の言葉を喉元で飲み込み、文目を見つめてゆっくり言った。 「ご想像に、おまかせします」 「いけず!桔梗さんはいけずや!京都人!」  ペロっと舌を出し(おど)ける桔梗に、文目は頬を膨らませた。 (ゴメンな文目ちゃん。ちょっとだけ意地悪させてな。将軍塚での出来事は心にしまっておきたいの。鈴さんありがとう!私も頑張ります!)
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