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そんなある日。
天気予報通り、昼過ぎから振りだした雨は、夕方の退勤時間には土砂降りになっていた。
「降ってきたね」
「やっぱり大きめの傘でよかった」
「今日はまっすぐ帰ろ」
と会社の玄関で口々に話し、そそくさと家路につく社員同僚たち。
ふと彼を見るとやはり少しぼんやりし、
「やっちまったか…」
と呟く。
「あの、途中まででよかったら、入っていきますか?」
「えっ?…いや、いい」
むしろ声を掛けられたことに驚いているようだ。
そして鞄を頭に乗せて傘にして飛び出したものの、通勤スーツ用の靴で、滑って転んでしまった。
滑り止めのない靴らしい。
「いって!」
「ほらあ」
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