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直感
僕は昔よくこう思っていた。
雨って降ってくるものなんだろうか。
僕には地面から水が湧いてきているようにしか見えなかった。
子供の頃、雨が「降る」という表現に全くしっくり来ていなかった。
だって上から下にいってないもん。
そんな風に思っていた。
中高生の頃、雨の降る仕組みを勉強した。
理屈は分かった。
でも直感は全然違った。
「傘を差すと濡れなくなるでしょ?それが直感じゃないの?」
仲の良かった友達はこう言った。
その通りだ。
ぐうの音も出ない。
ただ、それは「僕の」直感ではなかった。
しかし、年を重ねるに連れて「僕の」直感はどんどん薄れていった。
いつの間にか「僕の」直感と思っているものは「僕の」ではなくなってしまっていた。
「皆の」直感になってしまったのだ。
或いは、直感も結局は理屈になってしまったのだ。自分が直感だと思っているものは意識して考えなくても分かるようになった、理屈に移り変わってしまったのだ。
雨の日には時々、重力に従って落下する雨粒を見ながらそんな事を思い出す。
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