会いたくて

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 美味しかった。こんなにゆっくり食べたのは初めてだった。待ちながら、ゆっくりと食べたのに……高くに上がっていた日は、姿を隠し始めている。  ふと、鳴りもしないスマホを見る。  手に取って見ても、なにもない。着信も、メールも、なにも。  待っている間、寂しさと怒りが募っていたけど、もう諦めに近くなってきた。この時間になっても連絡ひとつももらえないなんて。  メニューが夜のメニューに変えられた。  顔を上げると、例の店員さんだ。ああ、可愛らしい笑顔。私も、こんな女性だったなら……。  彼女はレジにいた店長らしい男性に声をかけると姿を消した。そっか、勤務時間が終わるんだ。淋しいけど、最後まで笑顔の対応をしてくれたことに、ありがとうと心の中で言う。私の心は、あの店員さんのお蔭で、何度も救われた気がしていた。  頼んでいたパスタは、店長らしき男性が届けてくれた。  ありがとう。  きっと、店長さんは、私みたいな客がたまにいると知っている。  パスタは何てことのないナポリタンなのに、私は初めて食べるパスタに感動しているかのように、何度も涙を堪えた。  気持ちが落ち着いたころ、静かに席を立った。  会計が終わり、、 「ありがとうございました」  と、店長らしき男性はすてきな笑顔で私を送ってくれた。──ありがとう、は私の方。 「ありがとうございました」  カラン     
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