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 あれから、街を襲った豪雨は『何とか豪雨災害』として、しばらくの間テレビを賑わせた。  原因は一切不明。突然超猛烈に降り始め、かと思えばピタリと止んだその雨は、摩訶不思議な現象として、世の有識者はこぞって原因を突き止めようとした。  だが、あらゆる可能性が考察されたものの、確かな説など一つもなく、結局は『超自然現象』として終着したのだった。  そして、晴司と雫は――。 「雫ー! 早くしろよー!」  いつものように、晴司は外から雫を呼ぶ。そして雫が現れ、いつものように、二人で外出をする。  ……いつものように? 「……雫、今日は買い物でも行くか?」  雫は一度頷くと、そっと晴司の手を握る。晴司と雫は、互いに顔を真っ赤にしながら歩いていた。  そんな二人の距離は、前よりも、少しだけ近い。  繋いだ手が離れないように、繋がっていられるように、ほんの、少しだけ……――。  ……話は変わるが、そこから街は、灼熱の猛暑日が続いた。それは観測史における連続猛暑日の記録を更新させ、再び街に甚大な被害をもたらすのだった。  しかしながら、その後、街にもようやく雨が降ることになる。  奇しくもそれは、ちょうど、雫が財布を落とした日でもあったという……。
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