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雫は感情が希薄だ。
晴司と雫は家が近く、同い年で、小さい頃から顔見知りである。幼稚園をはじめ、小学校、中学校は当然同じ。果ては高校まで一緒であり、もはや腐れ縁と呼べるだろう。
雫は、昔から感情を表に出すことがなかった。
いつも眠そうにしていて、喜怒哀楽をほとんど出さない。と言うより、初見で彼女の感情を理解するのは到底不可能だろう。長年雫を見てきた晴司が、ようやく把握できるくらいだ。それこそフィーリングとも言える。
更に特出すべきことがあるとすれば、雫が、晴れ女であることだろうか。
社会科見学も、遠足も、修学旅行も、雫がいるといつも快晴となる。逆に風邪を引いたりして行けないと、必ずと言っていいほど雨が降った。それこそ、どしゃ降りの。
なんにせよ、雫さえいれば晴れるのである。しかし、いつも無表情で起きてるんだか寝てるんだか分からないミステリアスな彼女を、同級生達は気味悪がっていた。
その中で、唯一彼女が極度の晴れ女であることを知る晴司は、とにかく出かける度に誘いまくった。そして、何一つ天候を心配することなく、外出を謳歌するのであった。
それは、今も同じである。
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