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「はぁ……も、ダメッ! 駈ぅ~っ」  自分でも驚くような甘い声をあげて、従者であるはずの男の名を呼ぶ。  輝流は十七歳になった今でも男女ともに性交渉の経験はなかった。さすがに自慰は週に二~三度してはいたが、特別な相手がいるわけでもなかったし、性に関しては疎い方で淡白であると自負していた。  それがどうだろう……。幼い頃から常に一緒で、一番近い位置にいる駈にすべてを委ねようとしている。  野宮家の当主が執事に対してセック|スをせがむ姿はパワハラとも捉えかねない。しかし、誘われている駈の方は悪い気どころかそれが当たり前であるかのような顔で、大人の余裕を見せつける。 「輝流さま。何がダメなのですか? ハッキリ言っていだたかないと私とて対応出来ませんよ?」 「意地悪ぅ~! お前の……欲しいっ」 「何をご所望ですか?」  滑らかな肌の感触を楽しむように腰のラインをなぞる様に撫でる駈の手の動きに、輝流はビクンッと体を跳ねさせた。全身が性感帯にでもなってしまったかのように、どこもかしこも気持ちがいい。  それを心得ているかのような駈の手も、輝流の様子を窺いながら愛撫を続けていく。 「――挿れて」 「何をですか?」 「俺を……孕ませて。お前の子を……産みたい」  駈は堪らないという笑みを浮かべ、輝流の首筋に顔を埋めた。  自分の下で両手を拘束されたまま腰をくねらす主の姿は酷く煽情的で、駈の方としてもすぐにでも繋がりたいという気持ちが膨らんでいた。  本格的に発情期に突入したΩは子を成すことしか考えられなくなる。それが意にそぐわぬ相手だったとしても体は意志を凌駕し、求め、貪る。  学校に到着するのがあと数分遅れていたら……と考えただけで、駈はゾッとした。  あの卑しいだけのクズ男である晴也に犯され、彼の子を孕んだ輝流の姿を想像しただけで嫉妬と怒りに狂いそうになる。 (早く、自分だけのモノにしてしまいたい……)  体を繋げ、この首筋に消えることのない噛み痕を刻めば済むことなのだが、なぜかこの時になって踏み切れない自分がいた。
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