2.きっと

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「俺たちがちゃんと疾風ちゃんを見つけるから」  気休めだ、と思った。 「――本当ですか」  でも、その言葉を呑み込んだ。否定するような真似をしたくなかった。 「お願いします。ちゃんと、ちゃんと見つけてください……」  私は顔を歪ませて、刑事たちにそう頼んでいた。  翌朝、私は早く起きた。いや、起きたというよりちゃんと眠れなかった。  テレビをつけると時子が行方不明になったことが報道されていて不思議な気分になる。チャンネルを変えると、何処も時子のことをしていて最終的にテレビの電源を消した。  あの奇妙な感覚が甦ってくる。すぐに部屋に戻ったが、なかなかあの感覚は消えなかった。  ずっと部屋にこもることも出来なくて、私は外へ出る。とりあえず、時子が行きそうな場所に行ってみようと考えた。  でも、まずは昨日の本屋へ行こう。もしかすると、私の他に時子を見た人間がいるかもしれない。  こういうことをするとき、無闇に詳細を話す必要はない。ただ行方不明になった友達を捜しているとだけ言えばいい。  それは知らず知らずのうちに犯人の耳に入るかもしれないから。善意で誰かが誘拐だとSNSで拡散してしまって、犯人を悪戯に刺激して最悪の事態を招く可能性がある。  自分なりにやれることをやるしかない。ただ立ち止まって、後悔ばかりしてしまう前に。  きっと私は何かの力になれるはずだ。  重い身体をなんとか動かして、布団の中に潜り込んだ。  一日中、時子のことを聞いて回ったが、私はそれらしい情報を得ることが出来なかった。  まずは商店街へ向かい本屋の店主と少し話して、時子が消えた方向へ歩いた。  その過程で何度か家に来た刑事たちを見つけたが、思わず身を隠してしまった。遠目から見て、ちゃんと聞き込みをしていることを確認した。  刑事が商店街にいるなら、と私は時子が走っていった道を辿った。途中で見失ってしまったのだけど、このままずっと走っていたら……と考えながら歩いた。  時子が消えた道を進んでいくと、広い国道にぶつかる。  そこで私はどうすればいいかわからなくなって、ただその国道を眺めていた。しばらく見ていると、交通量が多い道だということがわかった。多分、誘拐する誘拐犯はいないだろう。  来た道を戻るときに会ったお婆さんに話し掛けたりもしたが、時子のことは何も知らなさそうだった。
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