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高層ビルから、同じ制服のOLが数人、財布を持って出てくる。昼食を買いにコンビニに向かうのだろう。 そのなかのひとりが、となりのビルを見上げてつぶやいた。 「このビル、変な新興宗教の旗がなくなったね」 「そういえばそうだねー」 「聞いた話なんだけど、教祖って人がおかしくなっちゃって、地下の暗―い独房みたいなとこに引きこもって出てこなくなっちゃったんだって。 しかもそこって、金払いの悪い信者の人を見せしめに閉じ込めたりしてた場所らしくって。ひとり死人も出してるらしいよ」 「えっ……そうなの? なんでそんな場所に自分から?」 「さあ……だから、おかしくなっちゃったんだって」 「ああ……」 「脳卒中か何かで倒れてかららしいんだけど。でね、倒れたときにすぐに奥さんと息子さんが駆けつけてずっとベッドのそばにいたんだけど、そのふたり、どうも偽物だったらしいのよ」 「ええ?」 「だってね、奥さんはそのとき会員制の高級エステサロンにいたし、息子さんはクラブかどっかで女の人はべらかしてたって」 「本当に?」 「本当かどうかなんて知らないけど。それにそのふたり、『主人が懺悔しました』なんていって、警察に届けてくれって金庫の鍵やら隠れ家の鍵やらを病院に預けていなくなっちゃったらしいから。 そのあとナンバー2以下は例の死人騒動やら恐喝・ゆすりの証拠が出て軒並みお縄。実際に一般信者から大金巻き上げて悪事をはたらいてたのはこの人たちらしいからね。教祖は、まあもともとけっこうイッちゃってる人で、そこを利用されてたみたい。 倒れて以来精神的にアレだから、責任能力なしで追及を逃れたみたいよ。不幸中の幸いだったかもね」 「詳しいんだねー えっと……誰だっけ? 同じ課じゃ……ないよね?」 「え? あんたの友達じゃないの? わたしてっきり……」  ふたりは顔を見合わせてから、揃って不思議そうにもうひとりの制服の女を見やる。  女は赤い唇を三日月形にすると、1枚の名刺を取り出した。
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